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2018/10/31 【山口】下関

「あったらいいな、こんな町」あたたかな木の器に込める熱い想い

by 編集部:ちゃちゃ
福岡県北九州市生まれ。 普段はごろごろ大好きインドア派。 美味しそうなもの、綺麗なお花、のんびりできそうな温泉、その他わくわくしそうなことを見つけると急遽アクテ…

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「ここがモノづくりの町になれば面白い」

下関市豊浦町には、自分の住む町に対して熱い想いを秘めた方がいます。
豊浦町宇賀本郷にあるムクロジ木器(もっき)の辻翔平さんです。

[辻翔平さんと奥様]

今回は辻さんのモノづくりへの想いと、そこに至るまでの出会いと経験を語っていただきました。

 

木工挽物職人

辻さんは、木工挽物(ひきもの)職人。
挽物とは木工用のろくろを使い、回転する木材に刃物をあてて削る技法のことです。

学生時代にインターンを通して挽物職人に出会い、回転する木材に刃があたってすーっと木くずが飛んでいくのを見て、一瞬にして惹かれたそうです。インターン終了後もその企業に通いつめるほどの熱心さ。「その企業にとっては絶対迷惑ですよね」と笑って話す辻さんですが、まさにその時が自分のやりたいことを見つけた瞬間だったようです。

早い人は中学校卒業と同時に職人の道に進む中、辻さんは社会人経験があるからこそなれる木工職人を目指し、木工製品を取り扱う企業に就職しました。

その頃から辻さんの木工愛はすごかったんです。営業担当だった辻さんは、木工製品を売ることが仕事のはずですが、なんとクライアントが求めている木工製品を自ら作ってしまったんです。「その時はめちゃくちゃ怒られましたけど、やりたいことをやらせてくれる懐の大きな社長でしたね。企業に就職したことで本当にいろんなことを学びました」とお話しされていました。

 

独立
2つの想い

企業で色々な経験を通じて学びながらも「やっぱり自分で作りたい」という想いを持ち続けた辻さんは、いよいよ木工挽物職人として独立を決意。

自分が作りたいという思いもありますが、会社員を辞めて独立をすることで、子どもに「地元」と呼べる場所を作ってあげたいという想いもあったそうです。

辻さんは奈良県出身ですが、お父様の仕事の関係で地方を転々とし、「地元」と呼べる場所がないといいます。だからこそ自分の子どもには、自分の育った場所、いつでも帰れる場所として地元を作ってあげたかったそうです。

この2つの想いから奥様の実家がある山口県で、「ムクロジ木器」として独立しました。独立が容易なことではないことは皆さんもご存知の通り。かけだしの時に出会った方が、事業が軌道に乗るまでサポートしてくださったそうです。

 

ムクロジ木器
素材のストーリーを伝える

これが辻さんの作る木の器です。

手触りはすべすべ、木のあたたかさを感じます。きれいな丸みを帯びた器は、とても軽く使いやすさ抜群。「木だから水が染み込みそう」と気になってしまいますが、表面は数回にわたりコーティングされているため、水分は染み込まないそうです。

木器に使う木は十分に乾燥させる必要があり、加工できるまで通常3年から5年かかるため、資材屋から木材を仕入れるのが一般的です。

しかし、辻さんは違います。下関市宇賀本郷に移住し、豊かな自然と地元の方との出会いから、木の伐採に関わることが可能となったため、「木の伐採から器になるまで一貫して関わりたい」という想いが湧いてきて、自らの手で木を伐採し、材木作りから行っています。

独立して間もない今は、まだ乾燥途中の木が多く、仕入れた木材を使用していますが、将来的には下関のものを中心に使いたいと考えているそう。

「木を伐採し、乾燥させ、器にするまで全てに関わることで、木の樹齢、生えていた場所など、木の背景を知ることができ、器とともに素材自体の生きた証をストーリーとして多くの方々に伝えることができるんです」とお話しされていました。

 

「あったらいいな、こんな町」

辻さんは他県から移住されて5年。今ではここ宇賀本郷が自分の「地元」のように感じると話されていました。それはひとえに、独立を通して色々な方と出会い、つながり、関係を築いてきたからです。

そんな自分の町に恩返しをしたい、自分の町を盛り上げたいという気持ちから、ひらめいたのが、「ここがモノづくりの町になったらいいな」ということでした。豊かな自然があり、支援してくれる温かい人たちもいる宇賀本郷は、手仕事の人たちにとって、最適な場所だと気づいたそうです。

「モノづくりの町」という代名詞がつき、「ちょっと面白いから寄ってみようか」と緩やかな観光地になる。人口減少の甚だしいこの町も特徴的な町になる、とわくわくしながら話されていました。

辻さんは今、「モノづくりの町づくり」を目指して、他県からの移住のお手伝いもしているとのこと。1ヶ月に1人くらいは問い合わせがあり、できる限りのフォローをしています。住む場所を見つけて、大家さんに直接話しに行く。なんとも原始的ですが、小さい町だからこそ人と人との繋がりが大きく、町のみんなもフォローしてくれるそうです。

豊かな自然のあるこの場所で、地域の人たちと深く関わりながら生活している辻さん。1日の始まりは、軽トラで娘さんを送り、地域の人とすれ違いざまに挨拶をすること。「子どもも周りの人と関わりながら成長し、育ててもらった感謝の気持ちを忘れずに恩返しをしたいと思う、そんな町になれば嬉しいな」と話されていました。

人との繋がりが希薄になりつつある現代に、こんなにも人との繋がりを大切に自分の住んでいる町を盛り上げたいと思う辻さんの熱い想いに心を動かされました。

そんな辻さんに会いに行ってみませんか。また辻さんの作る器に触れてみませんか。ムクロジ木器では月に1回、こけしやバターナイフを作るオープンファクトリーを開催しています。
詳しくはFacebook (https://www.facebook.com/mukuroji.mokki/)にアクセスしてみてください。

[ムの看板が目印です]

 

取材:2018年9月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

 

取材・文:編集部:ちゃちゃ
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Spot Information

ムクロジ木器

住所 山口県下関市豊浦町宇賀本郷4704
URL https://www.facebook.com/mukuroji.mokki/

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