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2018/11/10 【広島】広島

隠れた名作映画との出会いの場。町のミニシアター「横川シネマ」に行こう!

by 甲斐寛子
愛媛県出身。大学進学を機に広島へ。卒業後いったんは地元で就職するも、あまりに広島が好きすぎて再移住。好きな食べ物は焼き立てのパン。現在は広島のパン屋さんで働きつ…

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みなさまはミニシアターを利用されたことはありますか?ミニシアターは単に規模が小さいというだけでなく、独自にセレクトされたとっておきの映画を楽しめるのが特徴です。

今回ご紹介する「横川シネマ」も、そんなミニシアターの一つ。広島駅から西へひと駅、昔ながらの商店街や居酒屋さんが立ち並ぶ、「横川」という町の一角にあります。



昔ながらの映画館の面影を残すミニシアター

横川シネマはスクリーン数1、座席数70の小さな映画館です。1967年に、名画座としてオープンしました。歴史ある映画館ではありますが、2014年にリニューアル工事が行われたため館内はとてもきれいです。

イスはふかふかのソファ席。横幅がゆったりと広く、隣の人との距離も気になりません。座席番号は背もたれに直接刺しゅうされており、昔ながらの町の映画館らしい味わい深さが残っています。

ロビーに置かれているのは、つい20年ほど前まで使われていたというフィルム用の映写機。支配人の溝口徹さんが、この映写機の由来を教えてくれました。

「広島駅にあった『広島ステーションシネマ』が閉館する時、そこから貰った良い映写機と、元々使っていたこの古い映写機を入れ替えることになりました。重くてかさばるので2台のうち片方は手放したのですが、もう1台がなかなか捨てられなくって」。

実はこの映写機、映画の全盛期に横川で作られたもの。溝口さんもこの映写機で上映したことがあるそうです。町と映画の歴史に思いをはせ、「価値がありますよね、これには」と言って映写機を見つめていました。



映画をこよなく愛す支配人・溝口徹さん

支配人の溝口さんは、受付、編成、上映、清掃まで、全ての業務を一人でこなしています。入場受付をし、映写室でお弁当を食べ、朝10時から深夜11時頃まで毎日5~6本の作品を上映しています。

学生時代から映画館でアルバイトをしていた溝口さん。大学では映画研究会に入り、8ミリ映画の制作に没頭していたそうです。

卒業後は月曜から金曜までサラリーマンをしつつ、土日は映画館で上映のお手伝い。溝口さんの映画への情熱を感じた周囲の人々の勧めもあり、その後サラリーマンを辞め、『広島ステーションシネマ』に就職します。

溝口さんは従業員でありながら、なんとお給料を返上しレイトショー枠の上映権を購入。イベントとしての単発上映ではなく、自分が好きな映画を帯で(一定期間ごとに、同じ映画を同じ時間帯に)上映し続けました。「映画館での自主上映は、正直お給料より高かったです。給料が安かった、っていうのもあるんですけど(笑)」(溝口さん)

その後1998年に広島ステーションシネマが閉館。途方に暮れた溝口さんでしたが、翌1999年、当時の系列館だった横川シネマの支配人に着任し、現在にいたります。



レアな映画の愉しみを発掘する雑食性シアター

横川シネマのラインナップには、シネコンでかかっているようなメジャーな作品はありません。コンセプトは、「洋邦問わず、知名度には乏しくとも見どころの多いインディペンデント作品を中心に、レアな映画の愉しみを発掘する雑食性ミニシアター」。

監督や俳優のネームバリューにとらわれず、溝口さんが「見る価値がある」と判断したものを上映しています。


ちなみに取材日(9月)の上映作品は
・日本社会を見つめたドキュメンタリー『国家主義の誘惑』
・ナチスの秘書だった女性の独白『ゲッヘルズと私』
・心が揺さぶられる青春群像劇『菊とギロチン』
・23歳の若手監督  初の長編作品『少女邂逅』
・ミニシアターから空前の大ヒット『カメラを止めるな!』
・特殊な技法で描かれたフランスのアニメーション『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』

人口当たりの映画館数が全国トップクラスの広島でも、ここでしか観られないレアな映画がほとんどです。

シネコンで上映されるメジャーな映画とそうでない映画の違いを尋ねると、「どれも作品としての質は申し分ないです。ただ、最初の予算がないので、CMを打ったり大きな映画館で上映したりすることができない。それだけだと思います」と教えてくれました。

メジャー作品の力は強く、日本で上映されている映画全体のたった5%の作品で、市場の4分の3を占めているのが現状です。横川シネマでは、星の数ほどある残り95%の中から、溝口さんが太鼓判を押した隠れた名作が上映されているのです。



ミニシアターは隠れた名作映画との出会いの場

わたしがシネコンで映画を観る時は、まずは観たい映画が先にあり、そこから上映館を探すことがほとんどです。

しかし横川シネマで映画を観る時は、「何か映画観たいな。横川シネマ、今どんなのやってるかな」とふと思い、上映作品の中から自分が観たい映画を選んでいます。

溝口さんのお話をうかがい、映画の面白さは知名度に比例しないということがあらためてわかりました。わたしもここで出会った無名の映画に、何度心を動かされたかわかりません。

嬉しいことに、横川シネマの周辺にはギャラリーやカフェ、立ち飲み屋さんなど、映画の余韻をゆっくりと楽しむ環境も整っています。

あなたと映画との出会いを演出してくれるミニシアター。芸術の秋をきっかけに、みなさまも足を運んでみてはいかがでしょうか。


横川シネマ
【上映日】
毎月1~21日
(毎月末の上映予定については公式ページをご確認ください)

【料金】
一般:1,700円 大学生:1,500円
水曜日割引:1,100円
回数券:5回券5,200円を随時販売中


取材時期:2018年10月
※本記事の情報は執筆時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

取材・文:甲斐寛子
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Spot Information

横川シネマ

住所 広島県広島市西区横川町3丁目1-12
TEL 082-231-1001
URL http://yokogawacinema.com/

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