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2018/11/29 【山口】柳井

創業明治27年。白壁の町に佇む老舗文具店で味わう、文房具のある丁寧な暮らし|木阪賞文堂

by 藤本雅文
東京都出身。広告制作会社と編集プロダクション勤務ののち、3年前に山口県・周防大島へ移住。現在、フリーの編集者・ライターとして、広告や出版物などの企画・編集・執筆…

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野球選手にとってのバットやグローブと同じく、ライターにとって文房具は仕事になくてはならない生活必需品です。

取材時は罫線付ノートとボールペン、アイディアをまとめる時はスケッチブックと鉛筆(2B)を使い分け、ほかにもデザイン指示を入れる赤ペン、コピーをしたためる一筆箋などなど……挙げればきりがないほど、身の回りに文房具があふれています。

そんな筆者が愛してやまない文房具屋が、山口県柳井市にあります。創業明治27(1894)年。かつて商都として栄えた町・柳井。その面影を残す白壁の町並みに佇む「木阪賞文堂(きさかしょうぶんどう)」です。

 

日々の暮らしがちょっと豊かになる文具店


「お店には、自分が使っていいと思ったものを並べています。ペンなら書き味や重量バランス。ノートは裏抜けしないなどの最低限の質と、あとは機能性ですね。日常的に使うものなのでストレスがなく、日々の暮らしがちょっと豊かになる。そんな文房具が好きです」と話すのは、木阪賞文堂4代目の木阪泰之(やすゆき)さん。

木阪賞文堂にいると、あっという間に時間が過ぎ去ります。

理由の一つは、品揃えの豊富さ。ビンテージカラーや限定・廃番品などの一点ものを取り揃え、ペン一本選ぶにしても迷いに迷います。

そしてもう一つ、何よりの理由はそのほぼすべてに付けられている木阪さんお手製のPOPです。

「特徴や機能性の説明は最低限にして、『だから、なんなの?』というような独り言を書いています(笑)。思いついたときに書くので、その時の気分によってムラもあります。それでも、その文具に少しでも興味を持っていただきたいと心を込めています」。

【「暑さも寒さも、水濡れさえもへっちゃらです」のPOPは、文房具の定番・鉛筆に付けられたもの。柳井中央店では、国産高級鉛筆Hi-uniの全22硬度(10H〜10B)がバラ売りされている。絵描きを目指す友人のために取り揃えたという。】

 

白壁の小さな文房具店を継いだ理由


木阪さんは柳井市で生まれ育ち、大学卒業後、生命保険会社に入社。故郷を離れ、首都圏で働いていました。家業を継ぐつもりはなかった木阪さんですが、父親からの一通の手紙で柳井に戻ることを決意します。

「廃業を考えているという内容でした。父の字もどこか疲れているように見え、全てを読み終えたときには覚悟が固まっていました」。

帰郷した木阪さんは当時27歳。若さと元気を売りに、がむしゃらに走り続けました。しかし、40歳になった頃、大きな壁にぶち当たります。

「このままでいいのだろうかと思ったんです。価格競争に疲れたというのもありますし、働く喜び、文房具屋である喜びを失っていたのだと思います」。


木阪さんはしばらくして思い切った勝負に出ます。今まで「卸売」しかしていなかった商売のやり方を見直し、直接お客さんに販売する「小売」に方向転換したのです。

「白壁にある小さな文房具店。それでいいじゃないかと思ったんです。そう決めたら、自分の中からアイディアが溢れてきて、出会いに恵まれるようになりました」。

【木阪賞文堂では、白壁本店の倉庫に眠っていた30〜50年以上前の未使用品を「あの日の文具」として販売。鉛筆削りだけでも10種類以上が展示されている(非売品含む)。】

 

キャッチコピーは「つくれる文具屋さん」

木阪さんが「大きな転機」とあげるのが、ある消しゴムハンコ作家さんとの出会いです。

「たまたま近所に引っ越してきた方でした。お願いしてワークショップをしていただいたんですが、出来上がったものを見て鳥肌が立ちました。消しゴムを使ったハンコなのに、なんて美しいんだろうと。そのときの感動が、現在のオリジナルグッズを作って販売することにつながっています」。

そう、木阪賞文堂のキャッチコピーは「つくれる文具屋さん」。

柳井の郷土民芸品「金魚ちょうちん」や「白壁の町並み」をモチーフにした文房具をはじめ、さまざまなオリジナル商品を作っています。


ガチャガチャの景品から漆塗りの万年筆、さらにはオリジナルインクまで。「思いついたら商品化」を実践し、現在200点以上が店頭に並びます。

 

『書く』という文化を伝えていくために

もう一つの「転機」となった出会い。それが、どこにでもある万年筆でした。


「ペリカーノジュニアの万年筆です。たまたま入った文具店で見かけて、一瞥して通り過ぎたんです。言葉は悪いですが、どこにでもある安い万年筆なので。そうしたら『ちょっと待ってぇ〜』って声が聞こえた気がした。戻って手にとって、試し書きしてみたら、『な、なんだ、これは!』と。書き味といい、重量バランスといい、惚れ惚れするほどしっくりきたんです。このときから、文房具の見方が一変しました」。

レジ横に置かれた、木阪賞文堂オリジナル万年筆。そこには『父の肉筆に想う』と題して、こんな言葉が添えられています。

“手書きという行為は減ってくるのかもしれません。然しながら父から継いだ文具店主として、『直筆』、『肉筆』、『書く』という文化を、身の丈に応じて地元の皆様に伝えていくことが何よりの親孝行と思っています。”

木阪賞文堂にいると、文房具のある暮らしが無性に愛おしくなってきます。

目の前の文具を使っている情景が思い浮かび、ノートの手触り、ペンの書き味を試したくなり、108円のボールペンであってもインクの色にこだわりたくなります。

大げさに聞こえるかもしれませんが、パソコンやスマホを使うようになって失われてしまった感覚が呼び覚まされるような、そんな気分にさえなるのです。

木阪賞文堂
●白壁本店
所在地/山口県柳井市柳井津452番地(柳井白壁の町並み内)
TEL/0820-22-1878
営業時間/11:00〜17:00
定休日/毎週月曜日
URL/http://www.sirakabe.com

●柳井中央店
所在地/山口県柳井市中央3丁目278-2(柳井グリーンマンション前)
TEL/0820-22-0150
営業時間/8:00〜18:00(月~土)
定休日/日曜、祝日

取材時期:2018年11月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
最新の情報は直接各スポットへお問い合わせください。
また、本記事に記載されている写真や本文の無断転載・無断使用を禁止いたします。

取材・文:藤本雅文
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Spot Information

木阪賞文堂 白壁本店

住所 山口県柳井市柳井津452番地
TEL 0820-22-1878
営業時間 11:00〜17:00
定休日 毎週月曜日
URL http://www.sirakabe.com

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