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2018/08/07 【山口】岩国

【まちに人あり歴史あり】岩国から和太鼓文化を発信

今の時代に即した形で
和太鼓の魅力を届ける

遠くから地鳴りのような低い音が聞こえました。その音に注意深く耳を傾けると、一定のリズムがあります。時折、混じるドンという大きな音。しばらく聞いているうちに、ようやく音の正体が和太鼓だと気が付きました。ここは山口県下の小学校。体育館では、今まさに、和太鼓集団 山城組「空」による子どもたちへの和太鼓の指導が実施されていたのです。
体育館の戸を開けると、聞こえていた太鼓の音はいっそう力強く、そしてただ、音量が大きいのではなく、魂を底から揺さぶるような、“気”のようなものが凝縮しているのだと感じました。まさに鼓舞。気がつけば引き込まれ、撥(ばち)の残像を目で追っていました。

和太鼓集団 山城組「空」は、代表・中市博之さんが25年もの期間、指導してきた子どもたちによる和太鼓グループ「たぶせ山城太鼓」のOBが中心になっています。その結成は2014年。以来、山口県を中心に活動しています。
中市さんは「元々は盆踊りを後世に残すため、その楽曲を譜面に起こしたのが始まりなんです。その流れで小学生たちに太鼓を教えました。すると、これがすぐに覚えてしまうんですよ。本当に、どんどん吸収する。新しい課題を考えては、彼らがまたマスターするというように、それを繰り返していく延長に、現在があるんです」と教えてくれました。


山城組「空」は、結成当初は7人でしたが、現在、20代の社会人を中心に、高校生、中学生まで12人が所属。その2軍にあたる「風」は現在8人で、中学生以下が中心です。

山城組「空」は明確にプロを目指すという旗印があり、その目標に向けて突き進んでいます。

中市さんは「和太鼓をお祭りでなく、魅せること、つまりオーディエンスを夢中にさせるパフォーマンスとして捉え、表現しています」と言葉に力を込めます。古くから受け継がれてきた和太鼓の伝統を大切にしつつも現代に合わせたアレンジを施す中市さん。例えば、演奏にバスケットボールを使ったり、楽曲にブラジルの民族舞曲・サンバやインドネシアの民族芸能・ケチャを取り入れたり、その発想は柔軟です。なお、一年を通して実施される演奏発表においては、毎年、テーマを設けているとのこと。2018年は「無限花序」で、一本の茎があり、そこから花がどんどん咲き誇っていく姿を、自分達に重ね合わせたものです。こうしてテーマを作ることで、一年、そしてまた一年と、フレッシュな気持ちで太鼓を叩くことができます。


 

受け継ぐ伝統のバトン
和太鼓の文化を未来へ


実は今年、代表の中市さんは、その役目を後進へと引き継ぐことを決めました。新たにリーダーとなるのが木村嵩さんです。「和太鼓は叩けば誰でも音を鳴らせます。だからこそ、それを格好良く叩くのは想像以上の難しさがあります」という木村さん。自分ではできているつもりでも、端から見た時に格好良くなければ、ただの自己満足になってしまいます。客観的にどう目に映っているのか。常にそのことを意識しているのだと木村さんは教えてくれました。続けて、和太鼓の魅力について、このように伝えてくれました。「やった分だけ、自分に返ってきます。努力すると、必ず上達します。そのために必要なのが、がむしゃらさ。中途半端な心で努力をしてもダメなんです。中途半端は、雑念、雑音を拾ってしまいます。夢中になれば、余計なものが入ってきません」。

8月以降、山城組「空」として、東京都・荒川、神奈川県・戸塚での公演を予定。加えて、地元・田布施町では小さな子ども連れでも参加できる和太鼓のワークショップも企画しています。木村さんは「ワークショップは誰でも参加OKです。まずは和太鼓に触れてみてほしいですね」と笑顔を見せます。

木村さん同様、20年以上にわたって和太鼓を叩いてきた永田さんが「ぼくたちの演奏は1ステージで2時間。2時間の中に笑いがあり、見せ場があるエンターテイメント作品になっています。まだ知らない和太鼓の魅力に気付けるはずです」と言えば、木村さんの弟・悠司さんは「今でも、できないと思っていた曲ができた時の喜びは何ものにも代え難いものです。向上心がこれまでの自分を支えてくれました。ぜひステージでその成果を見てほしいですね」と笑顔を見せます。また、取材時、紅一点だった藤井さんは「空のメンバーは仲間であり、家族でもあるような、かけがえのない存在です。私たちは本気で一つに向かって努力している集団。公演ではその気迫を感じてほしいですね。女性だからといって遠慮はありません。常に男性にも負けないという気持ちで叩いています」と意気込みを語ってくれました。


木村さんは「仲間の力を借り、周りを巻き込んで、山城組『空』を育てていきたいですね。プロ化、そしてゆくゆくは劇場建設の夢も叶えたい」と宣言してくれました。山城組「空」における第二章の幕開けが楽しみでなりません。

■和太鼓集団 山城組「空」
https://www.sora-yamajiro.com/

取材:2018年6月
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。
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